たまゆら。
そのあと。
――それから、一か月が過ぎた。
「おはよう」
「あ、おはようユッキー」
教室に入ると、ふわっとした笑顔で挨拶が返ってくる。
こんなに幸せなことってないな、と思う。
香奈は私の机に駆け寄ってきて、携帯の画像を見せてくれた。
「見て見て、ユッキー。昨日ね、お父さんが子犬もらってきたの。
生まれたてのポメラニアン。メスなんだけど」
「わー、可愛い!」
画面の中では、ぽわんとした顔のポメラニアンの赤ちゃんが写っていた。
ごろんと寝転んでいて、気持ちよさそうなお腹が見える。
「…てか、香奈に似てない?
まぁ犬は飼い主に似るって言うしね」
「え、なにそれ!…でも、ちょっと嬉しいかも」
そんなたわいのない会話を、気を使うことなくできる。
その存在の有難さを改めて噛みしめていた。