たまゆら。


美奈子の声と共に、1限目の予鈴の音が鳴り響いた。
でもどうでもいいや、と思った。






「…初めての、サボリ」


屋上のヘリに腕を乗せて、顔を埋めた。
制服のブレザーの上に羽織った白いカーディガンから、柔軟剤の匂いがふわっと香る。

――小学生の頃に住んでいたアパートが懐かしい。
名前もあんまり覚えてないけど、近所の子たちと遊んだ。
何も難しいことは考えてなかった。



でも、中学や高校になるとしんどい。

どうやったら嫌われないか。
どうやったら好かれるか。
どうやったら馴染んでいけるか。

考えたくないのに、考えてしまう。
他人に影響される自分が、一番嫌なのに。




マリナさんのように、自由になりたい。


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