たまゆら。

私は冷蔵庫から麦茶を取り出しながらそう言い放つ。
そして棚からコップを取ろうとしたときに、「俺も!」という声がした。

「…」
睨みながらも、二つコップを取り出してテーブルの上に並べる。
それを見届けてから、三木蒼太は続けた。


「それも考えたんだけど、その友達、彼女と同棲しててね。昨日はたまたまその彼女がいなかったからラッキーだったけど、今日からはそうもいかないし」

「同棲?」


二つのコップに麦茶を注いだ。
少しぬるかったから、氷も入れてあげる。
カランと涼しげな音がした。

私は麦茶を三木蒼太に差し出しながら、「頭がいい大学かと思ってたけど、そうでもないんだね」と言った。

彼はコップを手に持ったまま、氷と同じぐらい澄んだ目で私を見上げた。



「え、なんで?」

「同棲とか。まぁ、勉強よりも恋愛にうつつ抜かして家を追い出されたあなたもそうだけど」


三木蒼太は、今学期から成績が下がって、今までもらっていた奨学金がもらえなくなったらしい。
就職が決まった大手企業の研修も何回か遅刻し、次同じことをすれば内定取り消しという状態。
それが原因で両親と喧嘩して家を飛び出したという話を昨日聞かされた。


「俺はそうかもしれないけど、同棲は?」

「だめな人のやることじゃん」



私があまりにはっきりと言い切ったからか、三木蒼太は目を丸くした。
きっと今まで、私ほど歯に衣着せない話し方をする人には会ってこなかったんだろう。
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