たまゆら。
「まぁ、俺がこれ以上とやかく言うことじゃないけど」
食器を返却台に置きながら、俊樹はなだめるような目を俺に向けた。
「遅刻とか欠席とかは気をつけろよ。あと、研修も」
「ん、そのつもり」
「誰もが憧れる外資企業だろ。内定取り消しとかになったら一発殴らせろ」
…それは怖い。
でもなんやかんやで、俊樹は面倒見がいいなと思う。
食堂を出て、手を振る。
次の授業は別々。
俊樹は背を向ける前に、最後に言った。
「初体験はあっさりしてたって言ったけど、そんなことないと俺は思うぞ」
「え?」
「体じゃなくて、心が満たされてなかったから、そうなったんだろ」
――心が満たされていなかったから。
そうなったんだろ。
じゃあな、と歩いていく大きな背中を見送りながら、俺はその言葉を反芻していた。