桜星サンセット
春の日に

4月初め、少し肌寒い春の日に、私はアンと出会った。


昨日まではポカポカとした陽気が続いていたが、今日は朝から冷たい風が吹いていた。

「せっかくの入学式なのにすごい風ねぇ」

髪を押さえながら、いつもより濃い化粧顔でお母さんが言った。

「うん・・・」

「ほら、早く。教室行かないと。お母さんはまだ話聞かないといけないらしいから。ほら、ほら、早く。もうみんな行っちゃったわよ」

急かされて歩き出したが、足が重い。

もう誰も居ない中庭を歩く。

はぁぁ。

今日何度目のため息だろうか。

この高校に行く事になってから、ため息の毎日を過ごしている。

< 1 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop