桜星サンセット
私は高野さんのウソ話よりも、みんなの方がずっとムカついたし、残酷だと思った。

高野さんももちろん許せない。

みんなは今までにアンがどれだけ傷ついたかなんてちっとも考えなくて、人を傷つけている意識なんて全く持っていない。

そして、今、アンに同情している。

しかも、アンをかわいそうと思っている自分はいい人だという意識はある。

そのせいで高野さんへの攻撃はさらに増している。

高野さんも自分がやった事とはいえちょっと気の毒だなと思う。

「舞ちゃんやるねぇ」

奈々ちゃんがたたえた。

「お姉ちゃんに昨日聞いたんだ。聞いといて良かった」

絵梨ちゃんもすっきりした笑顔でキャッキャ言っている。

友達の敵を打った気分なんだろうか。

アンへの誤解がなくなったことはとても感謝しているが、少しだけ複雑な思いが残った。

悪口の標的が移る瞬間を目の当たりにしたのだ。

それはホンの一瞬だったが、止める事のできない大きな空気の流れと、強い何かがあった。

得体の知れない、決して目に見えないその何かは何なんだろう？

私は今までに何回その何かに動かされてきたんだろう。

そんな恐怖に似た気持で一杯になった。


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