俺は彼女の名前を聞いたことがない
どこに行ったんだろう。


まさか、誰かにさらわれた…!?


俺は急いで辺りを見回した。


だけどやはり彼女の姿は見えない。


どこか遠くへ連れていかれたんだろうか。


--嫌な予感がする。



俺は額から数滴の冷や汗をかいた。


すると、




「蓮君〜!またね〜!!」


彼女の元気な声が聞こえた。


その方向に目をやると、

彼女はすでに俺とは反対のホームの階段を上がっている途中だった。



なんだ、さらわれたわけじゃないのか。


俺はホッと、安堵の溜め息を吐いた。



彼女は大きく右腕を横に振っていたのでそれに倣うように俺も手を振った。




そして彼女は階段を再び駆け上がりだす。

彼女の姿は見えなくなった。


瞬間、すごく寂しい感じがした。


--俺もそろそろ行こう。


俺は彼女とは反対のホームの階段へと歩く。


その階段への距離が、何故かいつも以上に長く感じた。







あ、彼女の名前、
また聞けなかったな…。



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