記憶が思い出に変わる時(仮)
「なんでいんの?」
なんでって
「椎名ちゃんに会いたかったから…
でも、もう帰る。
椎名ちゃん、また今度ね」
椎名ちゃんが悲しい顔をしないうちに
また、来ることを約束して
病室を出た。
“お兄ちゃんのこと、すき?”
「……」
椎名ちゃん相手なんだから
適当に“好き”って言っちゃえば
よかったのに。
言葉が出てこなかった。
あたしには陽希が、いる。
それに、加奈先輩が
日向のことを好きなんだ…。
あたしの出る幕はないはず…
この感情…まさかね。
あたしが日向を好きになんて
ならないよね…。