記憶が思い出に変わる時(仮)



「ゆー…り、ちゃん…」

「ああ、この人か」


椎名ちゃんの隣を離れて
男の人は歩いてきて
あたしの前で止まった。


「どうも。村岡です」


優しい表情をしているようだけど
日向とはあんまり似てない…

「わかりますけど…」

差し出された手は
消毒液の匂いがした。


「服部優梨です」


「いつも椎名をありがとね」

「いえ…」

「お父さんが…いないんだって?」

なんで…
この人に言わなきゃ
いけないんだろう。

初対面だけど
優しそうだけど

なんか…怖い、な。


「そうですけど…?」

「君も苦労してるんだろう…
きっとどこかでお父さんも
見守っていてくれてるよ…」

「…あほか。
お前が父親面してんじゃねーよ」


日向が、

この人を見る目が…


あまりにも冷たくて。



「…それじゃ、用事も済んだし。
またね、椎名」


村岡先生は
それだけ言って出て行ってしまった。


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