記憶が思い出に変わる時(仮)
*Side日向
「…」
あたしの足は
自然と桜の方へ向かった。
「…優梨…?」
「…さ、くら…?」
窓のすぐ外には満開の桜の木。
陽希…?
見てる?
貴方の大好きな桜―――…
―ガンッ
「っ、…何っしてんだよ…」
「優梨っ!」
頬には一筋の涙。
身体は窓を越えて
バランスを崩した。
俺があと少しでも
遅ければきっと4階のここから
落ちていただろう。
「っく…」
「優梨…」
床に座り込んだ小さな身体は
小刻みに震えていて
今にも壊れそうだと思った。
なんでこいつ、いきなり…
「村岡くん」
こいつの友達…
五十嵐っていったけ?
真剣なカオして
何だってんだよ…
「今の…誰にも…」
「言わねぇよ」
てか、言う相手もいねぇし。
「優梨、帰ろう?」
五十嵐は服部を
引きずるように帰っていった。
あとに残された俺は
教室にひとり。
「桜…?」
桜がなんだ?
あいつ、自殺願望でもあんのか?
考えてもわからない。
わからないから、
俺も教室を後にした。
次の日、
奴はいつもと変わらずに
隣の席にいた。