記憶が思い出に変わる時(仮)




何ともない様子を見て
ホッとした。


…俺には関係ねぇか。
気にする必要ないよな。





「きりーつ、礼」
「「お願いしまーす」」


授業開始5分後。

―スーッスーッ…

隣から気持ちよさそうな寝息。

なんでこんなに早く寝るの…

「村岡ー」

先生に見つかるも、
返事はない。

「服部、隣の起こせー」

…あたし?
小さくため息をついて
気持ちよく寝ている奴の
肩を叩く。


「…んだよ」

うわ、めちゃくちゃ
不機嫌なんですけど。

「俺の睡眠を2度も
邪魔しやがって…」

「先生に頼まれたんだもんっ」

「無視しとけ」


ってまた寝るし…
もー知らない。

低血圧なのかなー…
寝起き、絶対機嫌悪そう…。


「服部ー」

「はいっ?」

「村岡また寝たのかー?」
「…はい」

「じゃ、代わりにお前答えろ」


えぇぇぇ!?
とばっちりじゃん!


…最悪。

でも幸い得意な数学で。

「2+√3i」

「よろしい」


息をついて隣を見る。

もー…この人のせいで――…
「っ?!」

その目はこっちを見ていた。

お、起きてんじゃんっ!


あたしはすぐに視線をそらした。
突然のことに心臓が
びっくりしたから。


…なんだか、
目の奥が温かかった
気がしたから…。


もう一度視線を向けると
やっぱり気持ちよさそうに、
寝ているだけだった。

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