記憶が思い出に変わる時(仮)
「あたしたちと同い年、中学の頃はバスケ部のキャプテン…と、優梨の彼氏」
…そこまでは聞いていたのだが
“彼氏”と聞くとやはり
何か引っ掛かる。
「ルックスも顔もよくて、明るくてみんなの中心だった」
「モテるな、それ」
「うん。優梨と陽希は小学校からの付き合いだった。すごく仲良さそうで…あたしと仲よくなった中1の夏にはもう2人は付き合ってて…」
…こいつ、
もしかして陽希を―――…
「優梨はすごくすごく幸せそうだった。…陽希といる時は…」
…裏ではいじめられてたのか…
女のひがみというやつは怖い。
「陽希は見えるいじめからは守ってた。優梨は陽希のせいだ、って思って欲しくなくて必死に我慢してきた…あたしにも言わないで」
だけど、と
五十嵐はためらいを見せて話し続けた。
「中学卒業と同時に
引っ越すことが決まって、陽希は東京へと向かった………」
五十嵐は深刻そうな顔を浮かべた。
「でも…その途中で事故に、遭っ、て………」
「…」
「陽希の乗ったはずのバスは、運転手の居眠り運転が原因で崖から落ちて………」
ま、さか…
「…せ、生存者は…ゼロ、だって…新聞に………っ」
つまり…
陽希、という人物は
もうこの世に存在しない、ということ。
な、んだよ…それ…
そんな奴のことを
あいつは今でもずっと
想い続けているのか―――…?