鏡【一話完結型】

(ついに…ついに、聞けるのか)


逸る胸を抑えながら旭はその扉を押した。
ぎぎぎと、軋む低い音を立てながらどうにか扉は開いた。

錆びているのか、歪んでいるのか。
わからないが、その扉は重くて力を入れないと開かなかった。


「………これか」


やっとの事で中に入る事が出来た旭は呟く。
更に奥に進み、例の鏡の前に立った。

その鏡は思っていた以上に大きくて、旭は息を呑んだ。


(ゴクリ)

思わず生唾を飲み込む。
それにハッとしながら、旭は当初の目的を思い出す。


(鏡よ、鏡さん。で、いいんだっけ?)


何か、昔話にあるような言い方だけど、その方がしっくり来るからと旭は口を開く。


「鏡よ、鏡さん。聞きたい事がある」


シンとする室内。
旭の鼓動だけが聞こえる。

自分の姿が映る鏡を真っ直ぐに見詰めながら、旭は更に続けた。





「…弘喜は俺の子で合っているのだろうか?」
< 12 / 55 >

この作品をシェア

pagetop