鏡【一話完結型】
『…何を驚いている。お前が呼んだのだろう』


四人が動けずにいると何かが鏡に映る。
映った何かは、女の様な、男の様な、若い様な、年寄りの様な。

ぼんやりとした姿だった。


『もう一度聞け、小僧』

「こ、小僧じゃねえ。俺は信人だ。新藤信人だ」


信人は畏怖した気持ちを跳ねのけるようにでかい声で言った。


『くく、では新藤信人。もう一度我に問うが良い』


鏡に映ったぼんやりとした何かが、笑った様な気がした。
信人は震える手を強く握りしめると、一歩前へ足を踏み出して鏡をしっかりと見つめた。


「聞くぞ、鏡。
俺たちはずっと一緒にいられるのか」


なるべく堂々と見えるように、信人は仁王立ちしてそう問う。
小学生ながらも、ヤンチャで通ってる信人の小さなプライドがそうさせた。
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