鏡【一話完結型】
『……その問い、答えは“いられる”だろう』

「え」

『ただ、仲良く、ならばいられないだろう』

「……意味がわかんねえ」


また、鏡に映った何かが笑った様に見えた。


『これから先。お前たちは近くにいられる。
だが、仲良くではない』


さっき、言った事を繰り返すように言われ、信人の顔は曇る。


『…人間とは複雑なものだ。
感情なんてものが存在しなければ一緒にいられるものを』


それに、ずっと後ろで隠れていた風子が鏡に言った。
鏡の主の言葉を疑問に思ったのだ。


「でも…でも、感情があるから笑えるんじゃないの?」

風子は必死に、震えながらそう鏡に向かって話しかける。
鏡の主が首を傾げたように見えた。


「笑ったり、怒ったり、泣いたり。
だけど、そんな感情がなくなっちゃったら…楽しくない!」


風子はもう、無我夢中で叫んでいた。
それに他の三人は圧倒されているのか、黙ったまま風子を見ている。
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