鏡【一話完結型】
だけど、こうして。
長い年月を経て、それは“真実”へとなった。


真実のみを告げる鏡の主。


あれは、天の邪鬼でもなんでもなく。
ただの、真(まこと)だったのだ。


例えば、あの日旭に弘喜が子供でないと言ったのならば。
弘喜は旭を父親とは思わなかっただろう。

離婚するのも苦しまず、すんなりと言ったのかもしれない。
嘘をも真にしてしまう、その事実を目の当たりにした鏡の主はまた考えるだろう。



『……人間とは…不思議なモノだ』



ぼそっと呟くと、また鏡の主は奥深くに消えて行く。
また人が訪れる、その日まで。




           Fin.
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