鏡【一話完結型】
そこに古ぼけた洋館があった。
いつからあったのか、誰かが住んでいたのか。
それを誰も知らない。

その洋館に入って行く一人の少女。

年は最近17になったばかり。
名前を由香里と言った。


由香里は懐中電灯を持ちながら、奥へと進んでいく。


夏場の今は午後八時ぐらいになってやっと暗くなる。


だけど、この洋館周りは既に暗闇に支配されていた。
洋館を隠す様に生い茂った木々達の所為だろう。


「………」

由香里は黙々と進んでいく。
暗闇は怖くなかった。

怖いモノは他にあったから。


小さい頃から、由香里は母親が怖かった。



何もしていないのに、叩かれる。
叩きながら怒ったり、泣いたり。

それが日常茶飯事だった由香里は、他の家庭でもそうだと思っていた。

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