サクラに願いを
ミキちゃんは小さなスコップで穴を掘り返してくれた。
そこから出てきた1枚の写真を、不思議そうに眺めながら、これ? と、首を傾げてそれをオイラに渡してくれた。

「ありがとな」
「だれ?」
「カヨちゃんだよ。ミキちゃんのおばあちゃの子どものころだよ」
「オータも、うつってるよ」
「そうだよ。一緒に撮ったんだ」

そうか。ミキちゃんにも見えるのか。
オイラは嬉しくなって、顔をにこにこと綻ばせた。

「よし。じゃ、オイラ、がんばってみるよ」

ケンちゃんと母ちゃんが元気になれるようにな。
泥だらけのミキちゃんの手を握り、オイラはミキにそう告げた。

小さな女の子の、たった一つの願いすら叶えてやれないで、なにが神様だよ。

オイラはそう自分を叱った。


多分。
残っている力、全部使えば、病院とやらまで飛んでいくくらいはできるだろう。
守田さんちに降りかかっているこの厄災を、オイラが払ってやらなきゃな。

「ミキちゃん。伝言頼んでいいか?」
「でんごん?」
「あのな。ケンちゃんたちが元気になったら、守田さんちの人たちに伝えて。オイラのことを大事にしてくれてありがとなって」

ミキちゃんと、きょとんとして顔でオイラを見上げて、何かを考えんでいた。

「おおおじぃに、そういえばいいの?」
「うん。おおおじぃに、そう言ってな。お団子もおいしかったよって」

オイラの言葉にこくんと頷いたミキちゃんの髪をオイラは撫でた。

「来てくれて、ありがとうな。さあ、暗くなってきたから、もう、お家にお帰り」
「うん。またね」

今までなら、うん、またなと、そう答えていたけれど、きっとそれは叶えられない願いだから、オイラはただ笑って手を振った。

手の中の写真を見る。
ちょうど、今のミキちゃんくらいの年のころのカヨちゃんと、カヨちゃんと同じくらいの年ごろの男の子の姿をオイラが、そこに仲良く並んで写っていた。


カヨちゃん。約束、守れなかったら、ごめんな。
迎えに行けるくらい力、残ってればいいんだけどな。
オイラも、けっこうヨボヨボのおじいちゃんになっててさ。
迎えに行けなかったときは、一足先にカヨちゃんが教えてくれた天国ってとこに行ってるから、オイラのこと、見つけてくれよ。
ケンちゃんと母ちゃん、助けてくるよ。



写真の中のカヨちゃんに、オイラはそう話しかけた。
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