罪語りて所在の月を見る


「ずっと、迷惑だった」


だから、言った。


「友人なんて鬱陶しいだけだ」


だから、言ったんだ。


「もう僕と関わらないでほしい」


だから――


「さようなら」


別れの挨拶を向け、最後まで素っ気なく、『悪者』として背を向けたのに。


袖口を引っ張られた。


「わた、る……、わたる、ん……」


すがりつくような、涙をぽろぽろ溢していると見ずとも分かるか細い声。


阿行が離れていく渉の袖を引っ張り、精一杯。


「やだぁ、やだよ……、わたるん……」


『行かないで』と、訴えかけた。


「……。離してください、阿行さん」


視線はあくまでも前に。阿行の顔すら見たくないと嫌悪感を表現して、渉は言った。


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