罪語りて所在の月を見る
「嫌なんですよ、あなたが一番に鬱陶しい。都市伝説の怪異だからと近づけば、勝手になついて。ことある度に、おぶさりと迷惑だっ……た……」
締め付けられる胸。声が裏返り、喉元を捲るような苦痛に顔を歪ませた。
だが、間違っていない。これが正しいんだと、渉は振り向かなかった。
――振り向けば、涙を溜めた目が見られてしまうから。
「わたるん、わたる、ん……」
袖を掴んだまま、渉に呼びかけてもダメだと知った阿行が。
「あぎょう、さん……さぎょう、ご……いか、に……?」
それは、阿行なりの唯一の抵抗だった。
都市伝説としての阿行本来の形。その言葉の意味を知らない者は食べられてしまうと言うそんな話だが、今の言葉は怖いとは無縁な。単に、『その答えを言ってほしい』とした言葉かけだった。