罪語りて所在の月を見る


変われるかもしれないと思った。


今までここを通る度、挨拶こそはすれど、一度も伯母を見ていなかったと――そんな逃げる自分に嫌気がさした。


統合失調症、境界性人格障害。現実も幻覚の区別がつかず、声をかけても反応しない、“死んだ我が子にかごめを歌い続ける母親”に通じる言葉などないのに。


「………………」


歌が、止まった。


レコードの針が飛んだように、ぴたっと唐突なる沈黙が走る。


聞いてくれたんだと、会話ができるんだと、渉が更に言葉をかけようとした時――


“ぐるん”と頭が垂れ下がった。


白眼を剥いた眼球を思い出す。それだけ早く、首が後ろに折れてみせるのだから。


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