狭い空





「とりあえず、中に入ってもいいか?」

「いや…それは…。」




それは…困るよ先生、
僕は今調子が優れてないわけで。


それっていうのは
うつりやすくなってしまうわけで…



いくら他人だとはいえ
この状態で人には会いたくない。




「母さんから聞かなかったんですか。僕、今結構体調悪いんです」

「ああ。もちろんそれは聞いたさ。聞いたうえでいっているんだがな…?」

「え・・・。」




なに…言ってんだこの人。

馬鹿なのは知っていたが
これほどまでとは・・・。



先生、僕の病気は
簡単に治るほど弱かないんだよ?




「先生なあ、お前と話がしたいんだ」

「私もなの、開けてくれるかな…?」



大塚先生も、何言って・・・




ガチャ…

少し遠慮がちに
ドアノブが回って


佐伯先生が僕の前に立っていた。




「久しぶりだな、かおる」

「ああ…久しぶり、先生」




先生たちはマスクをきっちりしていて
手にはゴム手袋をしていた



失礼かもしれないが、と
入る際に言ってくれたので

あまり苦ではない





「ちょっと、…うれしかったよ?」

「え・・・?」

「僕と話したいだなんて…ちょっと、嬉しかった。」




それでも、直接話すことは
しなくてもよかったんだけどね


でも、それでも

このつまらない生活には
嬉しい言葉だった



僕はにこっと笑いかけた




「お前、笑顔がまた硬くなったんじゃないのか?」

「・・・そう?マジで?」





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