キャンディーをひとつ
廊下を歩く私の歩調に、
副議長も合わせてくれているようだった。
横に並んで歩いていると何だか不思議な気分になる。
「なんだかんだで2年生だもんなあ、早いよなあ」
「そうですね…」
「でも俺、春ってすげー好きなんだ!あったかいし!」
きらきらした表情で話しかけてくる副議長は、
春らしいと思った。
職員室までの長い廊下、
こうして暖かいのも良いかもしれない。
開いた窓からは生き生きと風に乗る桜の花びらが見えた。
「俺の誕生日って5月なの。春に近くない?
だから好きっていうのもあるんだけどさあ」
「誕生日…」
あっ、と何か閃いたような顔で副議長が私を見た。
「篠原さんは誕生日いつ?俺、5月8日!」
「私は4月12日です」
私も一応春生まれだけれど、
彼の様に器用には笑えない。
「春じゃん!ていうか明後日じゃん!
これも何かの縁だし、何か祝いたいなあ」
「…ありがとう、気持ちだけで嬉しいよ」
あどけなく笑う彼の方が、春だった。