Dear
「――――雪那っ!」


不意に名前を呼ばれ、驚きながら振り向くとそこには息を切らしながら、ものすごい剣幕でアタシと疾風を見ている奏哉がいた。


「奏哉!…そんなに息切らしてどうしたの?」

「…次、教室移動だって、言ってたの…忘れた?」

「…あ」


マジで忘れてたのかよ…と若干落ち込みながら、呆れたような顔をして、わざとらしく大きな溜め息をついた奏哉。


「向こうに雪那がいなかったから、見に来た。」

「マジですか…ごめんね?
あと、心配してくれてありがとう」

「…あぁ」


何時もと違って余裕の無い雰囲気の奏哉を見て、少し心配になったが気のせいかと思って、口には出さなかった。
すると、横からやり取りを見ていた疾風が奏哉を見て


「お前さぁ…コイツの何?」


と言った。


「は…?誰だよ、お前。」

「俺は吉川疾風。お前が来る前までは俺とコイツの、二人っきりで話してた」


"二人っきり"を強調して、まるで奏哉にケンカを売っているかのような口ぶりで答える疾風。


「……はや、」

「テメーは黙ってろっ」

「…はい」


疾風に怒られちゃったのでこれ以上は口出ししない事にした。
すると疾風が、また奏哉にケンカを売りはじめた。


「で。お前とコイツの関係はなんなんだよ、藤本クン?」
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