Dear
暫く沈黙が続いたが、特にいつもと変わりない。

元々この人は必要以上には話さないからだ。
電話にしろメールにしろ、用が済めば直ぐ終わるし。
電話にした場合は、掛けて二分後には無言になる。

そんな状況に慣れているからこそ、アタシは今幸せなわけでもあるんだけれど。


「…なに、見てるの?」


ふと律輝を見ると、教室の一部分をじっと見ていた。
気になって聞いてみたが
「…別に」としか答えてくれなくて、結局は全くわからなかった。


「…そろそろ教室戻るな」

「あ…うん」

「じゃ、またな」

「うん、ばいばい」


今のアタシには、そう言い教室へ戻っていった律輝の背中を寂しく思いながら、送る事しかできなかった。


教室に戻ると、クラスの皆(主に女子軍)が目を輝かせながら一斉に

「何の話してたの?」

「吉岡君とどんな関係?」

「雪那ちゃんと吉岡って、付き合ってるの?」

「え!今何ヶ月目?」

「デートは何回行った?」

などと問い質してきたが、何の話しと言われても殆ど何も話してないし。
それ以降の質問に関しては付き合ってないから答えようがない!


「律輝とはただの友達で、付き合ってないよ」


そう言って弁解した。
「そうなんだ…」と諦めてくれる人と、中には
「隠さなくていいって〜」と言い続ける人もいた。

絡むのに疲れて逃げるようにその場を後にした。


もうこれ以上、何もありませんように…と祈りながら
< 16 / 23 >

この作品をシェア

pagetop