Ｄｅａｒ

｢…奏哉は好きな人いないの？｣


未だ笑いが収まらない疾風を置き次の話題に移った。


｢好きな人、ねぇ｣

｢まさかの居ないパターンですか｣

｢…いや、うん。まぁ｣

｢ﾌﾟｯ…なにそれ？｣

｢まぁね、うん。｣


結局はぐらかされて、特に聞くことができず終わってしまった。


キーンコーンカーンコーン…


話し終わった所にタイミング良く鳴ったチャイム。

奏哉の座っている席の子がかなり迷惑そうに…いや、かなりビビりながら奏哉を見ていた。
一体どんだけ不良だと思われてんだ。


｢奏哉さま、チャイム鳴りましたケド｣

｢天木きてねぇし…いんじゃねぇ？｣

｢てゆーか後ろ見なさい｣


そう言ったアタシの言葉に反応して｢あ？｣と言いながら背後を横目で見るなり、背後にいた男子は


｢いやっあの、僕大丈夫なんで！｣


と焦りながらペコペコしてきた。

どんだけいい子なの君は。
それに比べてコイツは…。
そう思うと叔母さんにものすごく同情してきた。


｢いーよ、コイツ退かすからさ｣

｢ちょっ、おい！｣

｢ほら、退け｣

｢…っめんどくせぇな｣

｢ぐっじょぶ。また後で｣

｢…おぅ｣


ものっそいくだらない言い合いで終われるアタシ等の頭を誰か、どうにかしてくれ。

そう思っていると、ドアをガラッと開けてヒゲデブ…もとい、天木先生が入ってきた。


｢遅くなって悪いな。…よし、じゃあ号令｣

｢起立！…気をつけ、礼｣

｢｢｢お願いしまぁす！｣｣｣