蒼幻の天使~A Solitary Flower
「幻ってどういうこと!?」

私が叫ぶのと同時に、拓ちゃんが私を呼ぶ声が聞こえた。

観覧車の方角から聞こえるその声に振り返ると、拓ちゃんと沙希がまだ顔も見えない位置から手を振っているのが見えた。

「お前がオレ達にとって敵かどうか。月はまだ答えてくださらないようだ。だが、お前の母はオレ達、月のものだ。いただいていくぞ」

「ママが!?月のものって、どういう……」

最後まで言うか言わないかのところで、男の体は蒼の光をまとったかと思うと、徐々に体の線が薄れていった。

「……き、消えていく!!」

男の体はその輪郭を失ったと同時に、強い閃光を放ち、次の瞬間、跡形もなく消え去った。

「消えた?」

「美月!!」

呆けた顔をして地面にへたりこんでいた私の肩を拓ちゃんが揺さぶる。

「美月?どうしたんだ!?何かあったのか?急にいなくなって心配したんだぞ」

あまりにもいろんな事が一瞬で起こりすぎて。

今が現実なのか、それとも、私自身が幻だったのか、なんて。

そんなことをぼんやりと考えながら、宙に浮いた心地のまま、私は拓ちゃんに聞いていた。

「拓ちゃん、私の目……蒼い?」

拓ちゃんが眉を寄せて私の顔をのぞいた、と同時に私の意識は深い闇の中へと、落ちていった。




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