蒼幻の天使~A Solitary Flower
今までのパパの切なげな瞳と、月を見上げていたママの寂しげな顔が、フラッシュバックのようにわたしの頭を駆け巡った。

……ああ、そうだったんだ。

みんな、切ない恋をしていたんだね。

ママも、パパも、瑞樹さんも、いずみさんも。

そして、とても強い、永遠に消えない愛。

切ない涙が頬を伝ったけれど、とても温かい涙だった。

………こんなに強い愛、他に知らない。

突然、胸の中に、燃えるような「魂」を感じた。

それは確かに2つ、この胸の中にあって、わたしの胸を熱く燃えたぎらせた。

「その2つの魂があれば、あなたは実体のまま、ミラージュムーンに行くことができるわ。ママのように魂と肉体が離れてしまうこともない」

………引き寄せられる……!!

切ない「永遠の愛」を感じた途端、わたしの魂がわたしの体を揺さぶり出した。

……熱い!!!

魂が、燃えるように、熱い……!!!

「……セ、イジュ……!!」

「美月、願うんだ!!月へ行きたいと……君のママのもとへ行きたいと……!!」

「……あぁあああ…!!マ…マぁ―――!!!」



激しい光に包まれたわたしの視界の端に、驚いているパパの顔があったけど。

「……美月……待て…!!」

引き寄せられる自分の体をどうすることもできずに、心配そうに顔を歪めたパパの顔を最後に。



…………わたしは、月へと旅立った。




< 77 / 116 >

この作品をシェア

pagetop