蒼幻の天使~A Solitary Flower
地球…と聞いて、わたしははっきりと違和感を覚えた。

昔自分のいた場所を指すのに『地球』という言葉はなかなか使わない。

それは今現実に自分が地球にいないことを意味していた。

「…セイジュ…ここ……月、なの?」

体は宙に浮いているわけでなく、ちゃんと重力を感じるし、呼吸もできる。

それに気温も少し肌寒いけど、生きていけない気温じゃない。

言ってしまえば地球と変わらない。

とてもじゃないけど、信じられないのだ。

「美月。ここは“月”じゃなくて、ファントムの作った幻の世界。ミラージュムーンだ。信じないなら後ろを見てみろ」

セイジュはそう言うと、彼の後ろの空を見上げ、わたしの視線から体を逸らすように反転させた。

セイジュが遮っていた視界が開ける。

蒼い空に輝くソレは、わたしの瞳を通り越して、魂にまで飛び込んできたような気がした。

「……月!?」

月だとわかるまで少々の時間を要した。

だってそれは、あまりにも近く大きくわたしの目の前にあったから。

「美月、あれがオレたち月の一族の……永遠に変わらない生まれ故郷だ」

―――空の4分の1を埋めるほどの月が、その魂をわたしたちに寄せていた。



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