蒼幻の天使~A Solitary Flower
月の光はあまりにも美しくて、優しくて。


―――――まるで、月に抱(いだ)かれているみたいだ。



「月の古代神をファントムに奪われた月の一族はその力を失い、今では月に住むことができなくなった。全ての一族がこのミラージュムーンに移住し、ファントムに怯えながら細々と生きている」

蒼幻(ソウゲン)と呼ばれる蒼い草原を歩きながら、セイジュの話に聞き入っていた。

「地球で生きていた月の女神カナンも、ファントムに捕らわれ今は行方が知れない。このミラージュムーンに捕らわれている君のママの魂を取り戻さないと、月の一族の弱体化はますます進む一方だろう」

この世界はどうやら月よりは小さいらしく、月の一族だからこそ住める幻の世界らしかった。

滅びに瀕していた月の一族の一部から幻を作り出す能力を持つファントムという種族が生まれた。

彼らはその能力を利用し、月の一族に敵対するようにミラージュムーンを作り出しそこに月の古代神を奪って封印した。

そして今彼らが最も崇めているのが2つの魂を持つ月の女神の娘であるわたしだと言う。

……本当に信じられないことばかりだ。



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