満月の日の夜【短】
縋る様にお医者さんを見ると
お医者さんはゆっくりと口を開いた。
「おそらく、これが最後になるでしょう。
治療室に、入ってください。」
私は彰哉のお父さんとお母さんの後を黙ってついていくことしかできなかった。
消毒臭い殺風景な病室に心電図の音だけが響いていた。
彰哉が両親と何か話しているけれど
少し離れているだけで聞き取れないくらい
ちいさくて弱々しい声だった。
改めて、この人はいなくなってしまうんだ、
と思い知らされる。