満月の日の夜【短】
「ご迷惑お掛けするかもしれませんが、2週間よろしくお願いします。」
彼はそう言って頭を下げ、下げた頭を上げる時
私の方をちらっと見て微笑んだ。
私の大好きな、最期に見たあの笑顔で。
わかったよ、彰哉。
あなたは戻ってきてくれたんだね。
目頭が、熱くなった。
彰哉が死んでしまった日のように
窓から空を見上げた。
そこには暗い空はなく、
澄んだ青空が果てしなく続いていた。
黄色い満月はそこにはなくて、
代わりに白い満月が私たちを見下ろしていた。
翔、あなたのおかげで私はまた満月を好きになることができたよ。
もう一度、空を見上げると
さっきまで私たちを見下ろしていた月はもうそこにはなく、
代わりに照りつける太陽が私たちをさらしていた。
【END】