無口なあの子と不良なあの人
~玲side~

私は笠原玲。高校三年生。

自分ではごくごくフツーの高校三年生だと思うけど、周りから見るとかなり無口な女子らしい。

…まあ、人より無口なのは認める。

だってしょうがないでしょ。性格だもん。

そんな私だが今、結構ピンチだったりする。

満開の桜の下。

枝に引っ掛かった風船を取ろうとぴょんぴょん跳んでる。

別に私の風船じゃない。

風船ぐらいなら諦めるし。

でもこの風船は。

「お姉ちゃん…取れる?」

桜の木の下でぐすぐす泣いていた男の子の物だから。

「…ん。ちょっと待って。」

バックから携帯を取り出す。

現在AM:8:30。

入学式が始まるのは9:00。

そしてこの公園は学校のすぐ近く。

まあ間に合わない事はないだろう。

ローファーを脱ぎ、紺色の靴下も一緒に脱ぐ。

で、いざ桜の木に。

登ろうとしたんだけど。

「はいストーップ。」

なにやらニコニコ笑顔のイケメンに止められた。

だがこのイケメン。ただのイケメンじゃない。

両耳にピアス。髪の毛は茶髪。私と同じ制服は着崩している。

…不良だ。

だけどそんな格好でもカッコいいのはやはりイケメンだ。

イケメンパワーだ。

「ちょっと待ってろよーん♪」

わしゃわしゃと男の子の頭を撫でて、こっちにやって来るイケメン。

よんってなに。よんって。

「君は靴と、靴下履きなさーい。」

はい、と渡されたローファーと靴下。

いや、まだ風船取ってない…。

「よっし、やるか!」

するとこのイケメン、なんと木を登り始めた。

そのまま風船を取ると、木から飛び降りた。

このイケメン…出来る。


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