Teen.
*Prologue
流行りの歌声が突然響く。

ふ、とゆっくり音がした方を振り向くと、バスに乗っていた人たちは、同じように一か所を見つめていた。
その元凶である女の子は、少し恥ずかしそうに周囲に頭を下げながら携帯電話をしまっていた。
ああ、そんなに申し訳なさそうにしなくてもいいのに。
そう思うと同時に、彼女の制服を見て目を細める。

紺色のブレザー、グレーのチェックスカート、細い赤のリボン。
私もあんな制服を身にまとって、華やかに生きていた日があったような気がする。
脳みそのどこかに、その記憶は確実に存在するのに、私の中の何かが思い出すことを拒んでいる。
理由を求めるように目をそらして、右手の画面を見つめた。

バスは止まる。

ついさっきまでつまらなそうに景色を流し見していた乗客は、それぞれの大きな荷物を携えて、我先にと降りていく。

マナーモードに設定していなかった彼女も。

彼らは何に急かされているのだろう。
少し気になる。
しかし、それを知っても知らなくても、私の人生に何も影響はない。
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