彼の薬指
『どんな人?』

「優しいよ。歳がめちゃくちゃ離れてるけど…」

『…もしかして、妻子持ち?』


美羽は少し黙り、俯いた


「うん。はじめから知ってたんだけど…」

『そっかー…。今日、来てくれたんだね』

「うん!嬉しかったなぁ…少ししか話せなくて、すぐに帰っちゃったけど」


愛しそうに花束を眺め、時々指先でバラを揺らしてみる


そこへビールが到着し、わたし達はまたグラスを傾ける

時々、目で携帯を確認する美羽


『お店終わってから会う約束はしてなかったの?』

「うん。今日は子どもの誕生日なんだって。わたしと同じ日」

『そうなんだ。辛くは…ない?』


美羽は笑顔で答える


「少しね。寂しいけど…しょうがないし!」

『…だね…。よし!今日はわたしが付き合うぞ!』

「キャーッ!さすがお姉ちゃん、ありがとう」



二人の笑い声が重なる

美羽の目じりには、うっすら涙が残っていた
< 24 / 25 >

この作品をシェア

pagetop