彼の薬指



しばらく飲んで、再び酔いが回ってくる

わたしも美羽も、顔がほんのり紅い


酔った勢いに、美羽が彼氏の話をしだした


「ホントは、ものすっごい寂しい!辛い…。逢いたくても、なかなか逢えないし…罪悪感だって、無い訳じゃない」

『うん。』

「夜は電話もあまりできないし、もっと声が聞きたいのに」

『うん。』

「もっと早く会いたかった。彼が結婚する前に…」


美羽の目に、涙が溢れてくる


見た目は大人っぽくても、美羽はまだ、二十歳になったばかりだ
いろんな所にデートに行きたいだろうし、夜遅くまでの長電話だってしたいんだろう


周りの友人カップルは、それが「あたりまえ」なのだ
同じようにしたくても、不倫じゃ出来ない



『付き合いだして、どのくらいになるの?』

「…一年…かな」

『そっか。我慢してたんだね』

「うん…でも、会えたときは、優しくしてくれるから…」


離れられない。と美羽は自嘲した


もう、止めにしたい気持ちと
まだ、彼の傍にいたい気持ちが交差する


美羽の頬に、一筋の涙が伝う
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