彼の薬指
静かに流れる音楽を聴きながら
わたしは煙草を手に取った


慣れた手付きで、カクテルを作るバーテン


薄く色付いたお酒の入ったグラスを
わたしの前に静かに置く


「どうぞ。少し甘めです」

『ありがとう』


バーテンに微笑み返し、口を付けると
甘い香りが広がった


『いい香り。紅茶ですか?』

「はい。わかりました?
 紅茶とピーチのリキュールを入れてるんです」


そのまま口に含めると
甘い香りと、少しの酸味が広がり
少しだけ効いた炭酸が、喉の渇きを潤す


大人っぽいような、まだ子どものような
甘酸っぱいカクテル


『…おいしい!』


わたしの感想を聞くと、バーテンは満足そうに笑い


「飲みやすいでしょ?
 実はこのカクテル、オリジナルなんです」

『すごい!良く考え付きますね』

「あ、僕じゃないんです。彼に教わって…」


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