今日から私、キケンでクールな彼に溺愛されます。


恐る恐る横目で暁の顔を見ると、暁は窓の方に顔を向けていてどんな表情なのか分からなかった。



ただ、声の低さとか、暁をまとう空気から機嫌が悪いのは分かった。



怒らせてしまった。



そりゃそうだよ。

誰だって野次馬のように何でもかんでも恋人のことを聞かれたら嫌な気持ちになるよね。



彼氏彼女がどういう存在なのかは私には分からないけど……2人の事情もあるし、むやみに踏み込んではいけなかった。



仲が良いわけでもない私に簡単に話すことじゃないよね。



2人だけの思い出があって、それは私が知ることじゃない。



知る権利さえないのに。

暁の心の中に入ることすら出来ないのに。



暁をもっと知りたいと思っても、結局空回りして終わってしまう。



「……っ」



あれ……?

何で……涙が出てくるんだろう。



悲しいことなんて起こってないのに。

泣くことなんて何もないのに。



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