今日から私、キケンでクールな彼に溺愛されます。
きっとああ言ったのも、ママとパパを前にしていたからその場を切り抜けるために言っただけであって、特に深い意味はなかったはず。
それなのに、それなのに、私ってば……っ。
恥ずかしさから、今すぐにでもこの場からいなくなりたかった。
「飲み物っ、なんか飲み物持ってくるねっ!」
逃げるように部屋から出ていこうとドアノブに手をかけた、そのときだった……。
暁の左手がドアに触れているため、ドアを開けることができない。
すぐ後ろに暁の気配を感じる。
振り返ればすぐそこに暁がいる。
……だからこそ、その場から身動きがとれなかった。
暁の香水……ムスクだろうか。
男っぽい匂いが私の鼻をかすめる。
この香水には、なにか呼吸をしづらくする作用でもあるの……?
そう思ってしまうほど、ドキドキが止まらず、呼吸をするのに精一杯だった。