今日から私、キケンでクールな彼に溺愛されます。
「行ってきまーす」
家を出る時間になり、ママが見送りに玄関まで来てくれた。
「誕生日デート、楽しんでね」
「うんっ!ありがとう」
「あ、それとね、そのリップ、落ちにくいリップだから」
「……え?」
「チューしてもいいように、落ちにくいもの選んだの」
「ちゅ、チュー?!」
ニヤニヤと笑うママは、本当に楽しそうで、私よりもこのデートを楽しみにしてたんじゃないかと思うほどだった。
まさか、ママがこういうタイプだったとは……。
娘を17年間やってきたけど、まだまだ親の知らないところはあるんだなぁ。
……そんなとき、階段から誰かが降りてくる音がした。
「なんかチューとか聞こえたけど……なんの話?」
寝起き感満載のまー兄が階段から降りてきた。
まー兄も私の姿を見るなり、あからさまに驚いて言葉を失っていた。