今日から私、キケンでクールな彼に溺愛されます。


暁から誘ってくれたおかげで、さっきまでの不安が一気に吹っ飛んだ。



しかし……廊下はたくさんの人で溢れ返り、人とすれ違うのもままならないほどだった。



この中を歩くのはなかなか勇気がいるな……。



そう思っていたとき、暁が私の前に立ち、私の両手を自分のブレザーのすそに誘導した。



「とりあえずここにいろ」

「……うんっ、わかった」



暁が前で歩いてくれていたら、前から歩いてくる人の顔も見えないし、だいぶ楽になると思う。



それよりもなによりも……私への気づかいがすごく嬉しかった。



人混みの中を、暁の背中になるべく近づきながら歩いた。



暁から香るムスクの甘い匂いに、キュンとする。



……やっぱり私も変態なのかもしれないな。



中庭に着くまで、私の頭の中は暁の甘い匂いでいっぱいだった。


< 280 / 385 >

この作品をシェア

pagetop