今日から私、キケンでクールな彼に溺愛されます。
暁から誘ってくれたおかげで、さっきまでの不安が一気に吹っ飛んだ。
しかし……廊下はたくさんの人で溢れ返り、人とすれ違うのもままならないほどだった。
この中を歩くのはなかなか勇気がいるな……。
そう思っていたとき、暁が私の前に立ち、私の両手を自分のブレザーのすそに誘導した。
「とりあえずここにいろ」
「……うんっ、わかった」
暁が前で歩いてくれていたら、前から歩いてくる人の顔も見えないし、だいぶ楽になると思う。
それよりもなによりも……私への気づかいがすごく嬉しかった。
人混みの中を、暁の背中になるべく近づきながら歩いた。
暁から香るムスクの甘い匂いに、キュンとする。
……やっぱり私も変態なのかもしれないな。
中庭に着くまで、私の頭の中は暁の甘い匂いでいっぱいだった。