今日から私、キケンでクールな彼に溺愛されます。
反射的に背後にいた暁に抱きつき、後ろにまだお化けがいる気配がしたので、私は全身を震わせながら抱きつく手に力を入れた。
「おい、大丈夫かよ」
「大丈夫じゃないー…。もう無理だよ……」
「もういねぇよ」
「いなくても無理……っ。リタイアしたい……」
自分がここまで怖いものへの免疫がないことを今知った。
目も開けられないし、震えて歩くこともできないし、また驚かされたら今度こそ失神してしまいそう……。
「ちっ……」
暁が小さく舌打ちをしたのが聞こえた。
私がお化け屋敷に連れてきたようなものなのに、抱きつかれたり叫ばれたりしたら、そりゃあイライラするよね……。
しかし、次の瞬間、私の前でしゃがんだ暁は、両手を後ろに伸ばして「背中のれ」とぶっきらぼうに言ってきた。
「え?背中?」
「連れてってやる。もう終わりなんだからあと少し耐えろ」
「おんぶ……ってこと?」
「あぁ。いいからさっさと乗れ」
リタイアするにも出口を探さなきゃいけない。
それすら今の私にはできない。
暁の言葉に甘えて、私は暁におんぶしてもらう形になった。