思い出のきみ
ちょうど眠りに入った時に、携帯電話が鳴った。

沙依を起こさないように手を伸ばしたが、起こしてしまった。


「中田です。はい。はい…了解です。すぐに向かいます。」


「仕事?」


「あぁ。ごめんな。」


「仕方ないよ。」

沙依は微笑むと、オレの胸から頭をどけた。


ワイシャツを着ていると、沙依はネクタイを見せた。


「似合うと思って買っちゃった」


フフと笑うと、ネクタイをオレの首に掛けた。


細い指で、ネクタイを締めると「行ってらっしゃい。」と微笑んだ。
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