ユビキリ。
4:約束。
アパートは何も変わらずそこに建っていた。
翔の家だったドアの上には違う名前が貼ってある。
あの日、13年前の今日。
翔はおばさんの運転する車に乗ったんだろうか。
ナナちゃんも一緒に。
家族3人で仲良く。
夕飯の買い物にでも行こうって。
でも、
おばさんが向かったのはあの橋だった。
凄いスピードで橋の欄干に突っ込んで川に落ちた。
どうしてそんな事になったのか。
誰も教えてくれなくて。
翔は見つからなくて。
私の時間は止まった。
高校を卒業する年になって、やっとママが教えてくれた。
無理心中だったって。
遺書が家にあったんだって。
けど、
私の時間は動かないままだ。