ユビキリ。
「真奈って可愛いのに、なんで昔から男っ気がないんだろうね。」
言われて、
私はさぁと首をひねって見せた。
「きっと可愛くないんじゃない?」
私の言葉に、
まわりにいて聞き耳をたてていた数人が笑った。
「真奈は変わらねぇや。」
隣にいた男が言った。
この男は、
水ノ木 祐介と言う名で、
天下無敵の盛り上げ屋だった。
学級委員と体育係を兼任するという、
なんとも”らしい”ヤツ。
だった。
小学校を卒業してから、
社会人2年生になる過程の中で、
彼の才能は”女好き”という性質を全面に押し出して、
ただの軽いチャラチャラしたヤツに変貌をとげていた。
おかげで、
今回は私がターゲットなのか、
横にべったり張り付いてあちこちに触れてくる。
昔の彼は、
明るく活発で皆を引っ張っていく魅力のある人間だった。
そのイメージが強いから、
触れられる事に嫌悪感は無いのだけれど、
まずその気にはならない。
「真奈の事好きだったやついっぱいいたよな。」
変にテンションの上がった一人がそう言った。