ユビキリ。
「そうそう、真奈の事好きだったヤツこの際白状しちゃえ。」
小学生の頃は、
大人しくて目立たなかった中津 香織が言った。
彼女もなんだか豹変していて、
見た目だけで言えばいまだにギャルだ。
どうやらアパレル系の仕事をしているらしい。
人ってわからないもんだな、と遠く思った。
「俺はさらに惚れ直したけどな。」
隣の祐介が言った。
そう言ってさわやかに微笑みかけられても、
困る。
「そいつはどうも。」
素っ気なく答えたら、
祐介はこれでもかってくらいオーバーリアクションで床にしなだれ落ちた。
「真奈ちゃんたら、冷たい。」
祐介の言葉に、
皆の笑い声が響き渡った。
こういう男が好きな女もきっといるだろう。
私の興味の範囲外であるというだけだ。
しかし、
酒の入った元小学生は質が悪い。
いつの間にやら話題は、
担任の頭髪の話になっていた。
ヅラだったか、
という激論で笑いが巻き起こる。
別に構わない。
今日、
私がこんな集まりに出ようと思ったのは、
此処に来ればあの頃に少しでも近付ける気がしたからだ。
実際はそんなに甘くは無かったのだけれど。