ユビキリ。
翔と二人で、
並んで歩いた通学路。
横断歩道を渡るときは、
いつも翔が手をつないでくれた。
小学生の時は長く感じた横断歩道も、
今はそんな風には感じない。
もっと長い横断歩道を知ったし、
自分の歩幅も広くなったからだろう。
横断歩道を渡って、路地を入ったすぐ左が私の実家だ。
今は職場の近くで一人暮ししているから、
なんだか久しぶりな気もする。
後で寄ろうと思いながら、
私の足は真っ直ぐ路地の行き止まりを目指していた。
そこには古びたアパートが建っている。
そこの一階の、
一番手前の部屋が翔の家だった。
翔のパパは、
私達が小学校に上がる年に死んだ。
ずっと病気だったらしい。
おばさんはそれで、
すごく落ち込んでしまった。
優しかったおばさんが、
その頃からちょっと怖くなった。
すぐに翔やナナちゃんを叩くようになったし、
翔を家から追い出したりした。