*片思い*
「ふぅ・・・。なんとか間に合ったし・・・」


学校に着いたのは8時34分。


校門が閉まる1分前だった。


南先生は一足先に着いていて、玄関の前で待っていてくれた。



「おっはよ~ん♪郁美!!」


ハイテンションであたしに声をかけてきたのは、この高校で初めて出会って友達になった


三田淕(みた りく)。


淕には“千中恭平(ちなか きょうへい)”っていう優也の友達の彼氏がいる。


めっちゃラブラブだし・・・。



「郁美ギリギリだね。めずらしい・・・」


「うん、まあね・・・」


「あっ!恭ちゃんだぁ♪」


そう言って、教室のドアの前で手を振る恭平君の元へ走って行った。


もちろん。その隣には優也もいた。



あ゛ー。あたしも“優ちゃん”とか“優”って呼んでみたーい。


でも気持ち悪いって言われるだろうな・・・。


あ、そーいえば1回だけ勇気出して呼んだことがあるんだよね(笑)




あれは確か久しぶりに喧嘩した高2のある日の放課後だったけ・・・。





あたしの何十メートル先を歩く優也に向かって大声で


“優っ!!!!!”


って。


そしたら違う“悠”って人が振り向いちゃって・・・・・・まぁ、困ったもんよ。


その人近づいてきて“何?”とか言うし、優也はあたしが呼んだことも知らないで歩いてっちゃうし。


だからあたしはその“悠”って人に嘘付いて“メアド教えて下さい”って言ったんだ。


全然そんなつもりじゃないのに・・・。


真面目にため息出たんだから!




「はぁ・・・」


「何ため息ついてんの?」


「!?!?ゆ…優也!?」


「今日は一緒に途中まで歩いて来たのに学校着くの遅かったね」


「あはは・・・・・・まあね・・・」


言えるわけないじゃん。


優也と郁ちゃんがラブラブでテンション下がって、学校行く気なくなった・・・って。



鈍感もいいとこだよ。



バーカ。




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