月の欠片<短編>
それから受験までの2ヶ月間、私

は脇目も振らずに勉強した。邪念

を振り払うように、一心に机に向

かった。勉強以外の事には見向き

もしなかった。少し気を許すと事

を仕損じる。集中せよ。私はこの

言葉を自分で自分に言い聞かせ、

受験に臨んだ。そのお陰か、私は

第一志望の大学に入学することが

出来た。

やはり何事も一直線が良いものだ

。私はそう実感していた。最早こ

の時、私の脳裡からはあのラジオ

番組の記憶は消えてしまっていた



大学卒業後、私は順調過ぎるほど

のエリートコースを歩んだ。大手

の証券会社に進み、初恋の女性と

念願の結婚を果たし、可愛い子供

ももうけた。順風満帆という言葉

は、まさに自分の為にあると思え

た。

すべてが、上手く進んでいた。

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