二人の王子さま

「企むって・・・あたしは何も・・・」

そう言われてやっとわかった。
あたし、疑われているんだ。
あっちの国と仲が悪いっていうのは昨日遊馬さんに聞いたけど・・・

春さんはあたしをスパイ・・・だと思っているんだ。


「春さんあたしは・・・」

そう言おうとすると、春さんは笑顔でナイフみたいなものを取り出すと、あたしの首筋にそっと当てた。


「・・・っ!」

びっくりして動けないでいるあたしを見て、春さんはクスリと冷たく笑う。


「遊馬様に何をして気に入られてるのか知らないけど・・・
今ここで消えるなら、殺さないでいてあげる。
でも二度と遊馬様の前に現れないでね」


「はる・・・さん・・・」




「あっちに帰って大人しく暮らしなよ」


「・・・帰れるなら、帰りたいよ・・・」


あっちじゃない、元の世界に。



「そっか。ばいばい」





冷たい表情のまま、春さんはあたしを押した。




< 95 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop