二人の王子さま
「企むって・・・あたしは何も・・・」
そう言われてやっとわかった。
あたし、疑われているんだ。
あっちの国と仲が悪いっていうのは昨日遊馬さんに聞いたけど・・・
春さんはあたしをスパイ・・・だと思っているんだ。
「春さんあたしは・・・」
そう言おうとすると、春さんは笑顔でナイフみたいなものを取り出すと、あたしの首筋にそっと当てた。
「・・・っ!」
びっくりして動けないでいるあたしを見て、春さんはクスリと冷たく笑う。
「遊馬様に何をして気に入られてるのか知らないけど・・・
今ここで消えるなら、殺さないでいてあげる。
でも二度と遊馬様の前に現れないでね」
「はる・・・さん・・・」
「あっちに帰って大人しく暮らしなよ」
「・・・帰れるなら、帰りたいよ・・・」
あっちじゃない、元の世界に。
「そっか。ばいばい」
冷たい表情のまま、春さんはあたしを押した。